がんの危険因子 その5 がんと食生活 

今回は、パンダ先生の病気の学校から、

「がんのリスク その5 がんと食生活 その糖質制限ちょっと待って!」

前編・後編をまとめてご紹介いたします。詳しくは、下の動画をご覧ください。

食事と がん の関係

私たちにとって「食事」は、毎日のこと。食事と病気の関連は大きいといわれています。

日々、私たちはいろいろなものを摂取しているため、「何が、がんの原因になるのか?」を特定することは、非常に難しいです。食事に関するテレビの情報は、スポンサー企業の影響を受けているため、信用しきれないことも多いです。

そのような状況で、これまでの医学研究では、どのように食事と健康の因果関係を調査しているのかを見ていきましょう。

食生活と がん の発生の関連を調べた有名な研究

1988年から2003年までに日本の45の地域で、有名なJACC研究(文部省科研費研究)が行われました。40歳から79歳までの約11万人が調査に参加し、食生活について詳細なアンケートを取り、14年にわたり、がんの発生の追跡調査を実施。日本人を対象にした大規模な調査研究で、数多くのがんの原因について論文が出されています。

2つの研究を見てみましょう

緑茶が口腔がんのリスクを下げる

女性の場合に「緑茶を5杯以上飲むと口腔がんが予防できる」という結果が出ましたが、アンケート調査のため、データの正確性に疑問があります。そもそも口腔がんは日本人のがんとしては珍しい病気です。もともとのリスクが低いですし、緑茶の中にはカフェインもたくさん入っています。そのため、この研究結果を見て「よし!口腔がんを予防するために、毎日緑茶を5杯以上飲むぞ~」と考える人は少ないかもしれません。

高塩分食は胃がんのリスクになる

これは、高塩分食が好きですか?嫌いですか?というアンケートで、しょっぱい食べ物を好きな人は、胃がんになった人が1.3倍も多いという結果が出ています。好きということと、実際に多量の塩分を摂取していたかどうかは、正確にはわかりません。塩分が高い食事を、あまり意識しないで食べている人もいるかもしれません。

食事と病気の因果関係を調べる医学研究には、限界がある。

食事と病気を関連付ける研究には、限界があります。以下のような理由があげられます。

    • アンケート調査の限界・・・アンケート調査の妥当性に疑問があるということを研究者らが認めている。
    • 複合的な要因がある・・・食の好み、食事・仕事時間の帯の違い、受動喫煙の機会、生活環境など、統計処理で解決できない問題も多い。
    • 同じメニューでも内容・量が違う・・・原材料や調理法まで細かく調査するのは、実質的に無理がある。
    • 途中で食事内容が変わるかも・・・がん発生を観察するためには、10年以上長い期間が必要。長期間のため、食の好みが変わったり記録・解析するのも難しい。

研究の限界を知ったうえで、必要な情報を見極めよう

私たちは、研究には限界があるということ理解し、たくさんの情報の中から、有益で正しい情報を選別することが大切です。見極めるポイントは、以下の通りです。

  1. 「大規模」な調査研究を「複数」参考にする。(別々の研究で、同じような結果が出ているものは、信頼性が高い。)
  2. 国や地域で、どのような病気が多いのかを参考にする。(食事内容は地域による差が大きいので、どの地域でどのような病気が多いかは参考になります。)

目的は「健康寿命を延ばすこと!」

研究の目的は、がんにならないことではなく、「健康寿命を延ばすこと」にあります。一つ一つの食べ物が与える影響は小さくても、日々の積み重ねにより体は作られていきます。偏りのある食事ではなく、有効なのは「バランスよく」食べることで、リスクを分散することが大切です。

それらを踏まえて、知っておきたい食事とがんの種類

がんのリスクのある食べ物

赤肉・加工肉の取りすぎは、大腸がんに注意!

  • 加工肉や赤肉は、1週間で500g以内。
  • 魚類を中心としたタンパク質・脂質の摂取。
  • 食物繊維を十分に取り、便通を確保。

塩分にも注意!!

がんの予防効果のある食べ物

野菜・果物は、一日400gが目標だよ!

野菜ジュースを飲んでるから、野菜を食べなくても問題ない!

野菜は、ジュースで代用できるの?

野菜の代用として、野菜ジュースで栄養素を摂取するのは、なかなか難しいです。製造過程の加熱処理により、大事なビタミンBやビタミンCが失われていて、食物繊維も少なくなっています。

糖分が多い野菜ジュースもあるから、飲みすぎには気を付けて!

正しい糖質制限をしよう

糖質制限について、炭水化物を減らせば、肉類をいくら摂取してもやせることが出来る!」などと言う人もいますが、これは間違った情報です。極端に炭水化物を減らせばいいというものではありませんし、大量に加工肉・赤肉の摂取することは、大腸がんのリスクになります。

炭水化物を抜けば、お肉をたくさん食べても太らないんだよね?

炭水化物は、本当に体重を増加させるのか?

2011年に発表されたアメリカの研究(PMID:21696306)では、食べ物・炭水化物の摂取によって、体重増加にどのくらいの影響を与えるのか?原因になった食べ物と体重増加が示されています。

体重増加に影響を与えた「食べ物・炭水化物」は、以下の通りです。

  1. ポテトチップやフライドポテトなどのイモ類の揚げ物
  2. ジュース(果糖添加飲料)
  3. 加工肉・赤肉

炭水化物の摂取よりも赤肉・加工肉の方が体重増加につながるという結果がでました。

たんぱく質は、鶏肉・魚類からとる

活性酸素ニトロソ化合物の生成が少ないのは、魚や鶏肉で、脂肪の含有が少ない方がお勧めです。

お魚の練り物がたくさん入っている「おでん」がおすすめ😊

活性酸素…体内の代謝過程において、様々な成分と反応し、過剰になると細胞傷害をもたらす。
ニトロソ化合物・・・食品添加物の亜硝酸塩とアミノ酸から腸内細菌が作るアミンの反応により体内で生ずる。不安定で発がん性が高い。

炭水化物は、茶色をえらぶ

炭水化物のすべてがダメと誤解している人もいますが、必ずしもそうではありません。

炭水化物を取る際には、茶色の炭水化物(玄米・そば・ライ麦など)を取るように意識しましょう。茶色の炭水化物は全粒穀物といって、ビタミンB、たんぱく質、食物繊維を豊富に含んでいます。一方で、白い炭水化物(小麦粉・精米したお米など)をなるべく減らすとよいでしょう。

茶色の炭水化物=玄米・そば・ライ麦・きび粉など

今、「地中海食」が注目されている!

「地中海食」とは?

「地中海食」とは、地中海沿岸に暮らす人々の伝統的な食事法のことです。地中海に面した国々は、健康寿命が長い国が多いといわれています。

もともと地中海沿岸に暮らす人々は、赤肉・加工肉のような、動物性たんぱく質を摂取する習慣が少なく、魚介類が主となります。そして、ナッツとオリーブオイルなどを豊富に摂取するため、不飽和脂肪酸の比率が高いことが特徴です。

「地中海食」は、生活習慣病のリスクを低下させるだけでなく、長寿の秘訣として注目されています。

「地中海食」には、乳がんの予防効果がある

2003年から2009年にスペインで実施された、食事とがん予防の臨床試験の報告があります。4282人の女性を対象に、3つの食事のグループに分けて乳がんの発生率を比較しました。

この研究のメインは、心臓や血管の病気をターゲットにしたものでしたが、乳がんの発生率にとても興味深い結果が出ました。下記の3つの食事グループに分けて比較しています。

オリーブオイルを使った食事・・・乳がんの発生率 1.1%

ミックスナッツを補充した食事・・・乳がんの発生率 1.8%

低脂肪の食事・・・乳がんの発生率 2.9%

エキストラバージンオリーブオイルを食事に取り入れたグループが、乳がんの発生リスクを抑えることが、明らかになりました。(ハザード比0.31)

まとめ

今回は、パンダ先生の病気の学校ブログからがんのリスク その5 がんと食生活 その糖質制限ちょっと待って!前編・後編について解説いたしました。

毎日の食事の積み重ねで、私たちの体は作られていきます。大切なのは、偏りのある食事ではなく、バランスよく食べ、リスクを分散させること。そして、体が喜ぶ食事を無理せずに、続けていくことが、健康寿命をのばすことに繋がります。おいしい食事と時間を楽しみながら、自分の体は自分で守っていきましょう!

詳しくは、動画配信していますので、ぜひご覧ください。

次回は、がん検診・がん予防総集編です!

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