今回は、大腸がんの中でも手術が難しい「直腸がん」について解説します。詳しくは、動画配信を行っていますので、ぜひ下記の動画をクリックしてご覧ください。この記事では、動画解説を要約してお伝えします。
直腸がんは結腸がんとくらべて、何が問題なの?
大腸は、結腸と直腸からできています。結腸がんと直腸がんを合わせて大腸がんと言うので、その診断や治療の原則はどちらも大腸治療ガイドラインをによって大枠は決まってきます。ただし、直腸がんはおしりの穴(肛門)の近くにできますので、手術でがんをとる時に肛門が残るかどうかが大きな問題になります。
直腸の周りには、膀胱、子宮、尿道(前立腺含め)、自律神経(骨盤内臓神経・骨盤神経叢・下腹神経・陰部神経)などがあり、がんやその周りのリンパ節を上手にとるのが 難しく、結腸がんより後遺症(便の漏れ)や局所再発(骨盤内、手術した場所の再発) がやや多いといわれています。
リンパ節郭清という用語については、詳しくは動画サイト【大腸がんと言われたら(手術説明編1)】5:12-をご覧ください。
直腸のまわりの神経
・下腹神経→射精機能・内尿道口の閉鎖・内肛門括約筋の収縮に関与
・骨盤内臓神経→勃起や排尿・排便機能に関与
・骨盤神経叢→下腹神経と骨盤内臓神経により構成されている網目状の神経
・肛門挙筋神経→損傷すると便失禁や尿失禁の原因になる
・陰部神経→外陰部の主な知覚神経
直腸がんの手術の種類
・前方切除術(高位・低位)
おなか側から、直腸を掘って切除する術式。吻合部(切断した結腸と直腸をつないだ所)の位置により高位前方切除術や低位前方切除術と言われています。肛門を残し、一般的な手術方法になります。
・括約筋間直腸切除術(ISR:アイエスアール)
がんが肛門に近い場合、おなか側から直腸を掘って切除+お尻側から肛門括約筋の間を切除する術式。外肛門括約筋を温存し、内肛門括約筋を一部または全て切除し、肛門は残りますが、後遺症(排便障害)が出やすいと言われています。
・直腸切断術(マイルズ手術・ハルトマン手術)
腹会陰式直腸切断術(APR:エーピーアール)=マイルズ手術) 直腸がんが大きくなってしまって、肛門括約筋や肛門まで浸潤している場合は、肛門を残すことは出来ません。肛門ごとくり抜いてとってしまう術式。肛門も肛門括約筋もと ってしまい、縫い閉じてしまうので、永久的人工肛門(ストマ)を作ることになります
ハルトマン手術 前方切除術で取れる場所に腫瘍があり、腸閉塞や大腸穿孔で緊急手術になる場合は、全身状態が悪いため、縫合不全になりやすく、おなか側から直腸を切除し吻合はせずに人工肛門(ストマ)にしておく術式。あとで吻合(切断した結腸と直腸をつなぐ)して人工肛門をやめる場合もあります。
・その他の手術
直腸局所切除術 肛門の近くの浅い腫瘍(早期の直腸がんTis,T1)が対象で、がんとその近くの部分だけ切除する術式。手術でリンパ節転移の可能性が高いと判断されたら、追加の腸切除の手術が必要になります。
骨盤内臓器全摘出術 直腸がんが、隣接臓器まで浸潤している場合には、骨盤内の臓器をすべて摘出する手術。男性の場合は、精嚢・前立腺・膀胱、女性の場合は、膀胱・子宮・膣などがんと一緒に取ってしまいます。また、背中側に浸潤している場合は、お尻の骨の仙骨の一部も切除する「仙骨合併骨盤内臓全摘術」もあります。
まとめ
- 直腸がんの手術は結腸がんと違って、肛門・排便機能を残せるかが問題になる。
- 肛門が残せる手術は、前方切除術(高位・低位)かISR(括約筋間直腸切除術)
- 肛門を残せない場合は、マイルズ手術(人工肛門ストマ造設)
- 緊急手術はハルトマン手術(人工肛門ストマ造設)→直腸も肛門も無くなってしまい、一時的か永久的人工肛門(ストマ)が必要になる
- その他、局所切除術や骨盤内臓全摘術など特殊な術式もある。
ちょっと、文字だけでは難しい、分かりにくいところも多かったと思います。
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