直腸がんと言われたら 「後遺症編」

今回は、「手術説明編」の続き「後遺症編」です。いろんな後遺症でお悩みの方、これから治療を始めるにあたり、どんな後遺症が出てくるのか非常に不安に思っている方がいらっしゃると思いますので、直腸がん術後の後遺症の主な2つ(①直腸がなくなってしまうことの症状②自律神経の障害による症状)について詳しく解説します。

詳しくは、動画配信を行っていますので、ぜひ下記の動画をクリックしてご覧ください。この記事では、動画解説を要約してお伝えします。

 

直腸の働きと直腸が無くなってしまったら・・・?

 直腸は、うんちをためておく場所です。うんちは直腸にたまり、直腸の拡張が骨盤神経から脊髄や脳へ伝わります。そして、トイレにすぐ行けない場合でも意識的に我慢することができます。睡眠中など意識がない時でも、反射的に脊髄の方から自律神経が働き、内肛門括約筋が収縮してうんちがでないように、肛門をキュッと閉じる反射が起き、うんちが漏れることがありません。

 直腸は拡張しやすいので、うんちをためておけますが、結腸は直腸のようには拡張できないため、直腸が無くなると、ためておく容積が減り、ためておけないために頻回にうんちが出たり、その割に出し切れない感じが残ったりします。また、便意がわかりにくく、おならかな?と思ったらうんちが漏れたり、内肛門括約筋が機能しないと気が付かないうちに、うんちが漏れたりすることもあります。

 

対策は?

 術後のうんちコントロールは意のままに出来ないことが多いため、食事に気をつけたり、骨盤底筋を鍛える体操をしたりすることになります。

治療は?

 うんちの調節やバランスを薬でコントロールするというのは、難しいのです。お腹の薬は、ずっと飲み続ける必要はないので、体調に合わせて自分なりの使い方を見つけましょう。他に、道具を使いモニターを見ながら骨盤底筋の訓練をするバイオフィードバック療法や仙骨神経刺激治療があります。

 

どうしても、ダメな場合は?

 食事も気をつけて、リハビリも頑張っている、いろいろ薬も試したのに・・と不安となるでしょうが、前方切除術の場合は時間経過(1年~2,3年)とともに徐々に症状が改善してくることが多いです。

 ただ、内括約筋間直腸切除術(ISR)で内肛門括約筋を切った場合や放射線治療で筋肉自体がダメになっている場合は、良くならない場合もあります。後遺症がひどすぎて日常生活に支障がでているなら、人工肛門(ストマ)を作ることが解決の一つです。ストマを見て最初は残念な気持ちになるでしょうが、生活が劇的に改善した!という方もいます。

自律神経障害による症状

 自律神経は直腸を後ろからハグするような、包み込むように存在しています。出来るだけ障害を受けないように手術をしますが、がんが大きく神経を残せない場合や手術で触ったりするので自律神経を温存しても、後遺症が多少はおこります。

  • 下腹神経→射精機能・内尿道口の閉鎖・内肛門括約筋の収縮に関与
  • 骨盤内臓神経→勃起や排尿・排便機能に関与
  • 骨盤神経叢→下腹神経と骨盤内臓神経により構成されている網目状の神経
  • 肛門挙筋神経→損傷すると便失禁や尿失禁の原因になる
  • 陰部神経→外陰部の主な知覚神経

自律神経障害による後遺症

排尿障害 

尿が出きらない(膀胱の中に尿が残ってしまう)。膀胱の中に、いつも尿を貯めたままの状態だと、腎臓の悪化や尿路感染症の心配もあり、お薬で治療したり、自己導尿が必要になる場合もあります。

性機能障害

  • 男性の場合、勃起できない。射精できない。
  • 女性の場合、性欲や感度の低下、性交痛などがあります。

まとめ

直腸がんの術後の後遺症

  • 直腸がなくなることでの症状として、うんちをためておけなくなるということ。
  • 自律神経の障害によっておこる症状として、おもに排尿障害と性機能障害が多少なりおこるということ。

なるべく後遺症を減らし、治りも障害(後遺症)も両立させる方法がないかと考えられてきた結果、「放射線照射治療はどうか(主に欧米)・・」「側方リンパ節郭清はどうか(主に日本)・・」と言われています。次回「放射線か側方郭清か!編」で詳しく解説していきます。

 

パンダ先生の病気の学校では、校長のパンダ先生がやさしく、わかりやすく病気について解説しています。ぜひ、こちらの動画も併せてご覧ください。

 

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