急性虫垂炎と言われたら!手術しなくても大丈夫?

急性虫垂炎(いわゆる盲腸)というと”すぐ手術”のイメージを持っている方が多いかもしれませんが、実はそれほど酷い状態でなければ、「薬で散らすことも出来ますよ」と言われることもあります。確かに手術をしなくても薬だけで治る人もいるのですが、中には何ヶ月か後にまた再燃してしまって結局手術を受けることになった、という方もいらっしゃいます。

 虫垂炎になってしまったら「思い切ってすぐに手術を受けた方がいいのだろうか?」「薬で散らした場合の再発率ってどれくらい?」これらの疑問についてはこちらの動画で詳しくお答えしていますのでぜひご覧ください。

急性虫垂炎の基礎知識

虫垂ってどこにある?

 虫垂は大腸の一部である盲腸の先っぽについている細長い臓器を指します。腸と違って食べ物の消化・吸収の経路には含まれていないため、生きていく上で別に無くても困らないという不思議な臓器です。

虫垂炎とは 

 虫垂炎とは、虫垂に細菌が増殖して痛みや熱が出る病気のことです。治療の基本は炎症を起こしてしまった部分を切り取る「虫垂切除術」になります。ですが、文字通り虫垂だけを切除してすぐに治せるものは炎症の程度が軽い”単純性虫垂炎”の場合に限られます。「虫垂炎を薬で散らした」なんて話を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、このような軽い炎症の場合には抗菌薬で治す方法が選択されることもあります(後で詳しく解説します)。

 一方で、重症の場合には硬くなったウンチや腫瘍が虫垂に詰まって激しく炎症を起こしていたり、腫れあがった虫垂がやぶれて腹膜炎になる事もあります(これを”複雑性虫垂炎”といいます)。こうなると小腸と大腸の一部を切り取るという大掛かりな手術になることもあるため要注意です。ただの虫垂炎だから…といって甘くみるのは危険です。

昔は怖かった虫垂炎の歴史 

今でこそ数日の入院で治るイメージのある虫垂炎ですが、かつては死亡率60%という大変怖い病気でした。この病気が治療できるようになったのは、1887年にアメリカで手術が成功し、その後1990年代に入って欧米で手術が普及されてからのことです。また1928年にはペニシリンという抗菌薬が発見され、虫垂炎はさらに治療しやすくなりました。

 現在、虫垂炎は一生のうちに10人に1人がかかると言われるほどメジャーな病気であり、日本では一年間に6万件ほどの手術が行われています。10〜30歳で発症する人が多いですが、高齢者でも決して珍しくはなく誰もがなりうる病気です。

虫垂炎の治療法。薬で散らす?それとも手術?

軽い虫垂炎は手術しなくて大丈夫?

 はい。軽症の虫垂炎なら「薬でも手術でもどちらでも大丈夫」です。単純性虫垂炎の場合には、ほとんどのケースが抗菌薬で散らすことが可能です。入院期間も数日で済む場合が多いため「それならわざわざ手術を受けなくてもいいや」と考える人もいるかもしれません。 

 しかし、薬で散らした人の中には、数年の間に虫垂炎が再発して結局は手術が必要になってしまう場合も少なくありません。すぐに手術を受けなくても問題はありませんが、「いつ再発するか分からなくて不安」「大切なイベントを控えているから早めにしっかり治しておきたい」と思う人は最初から手術を受けておいた方が良いかもしれません。

薬で散らした場合の再発率は?

 結論から言うと、約4割の人たちは5年以内に再発し、手術が必要になっています。これは2018年に発表されたフィンランドの臨床研究の結果です。

グラフを見ると2年目以降は数が大きく増えることはなくほぼプラトーになっていますので、単純性虫垂炎では約6割の人は手術をしなくても済み、残りの4割は結局手術を受けることになったということが分かります。 再発率をざっくりまとめると、

  • 1年以内に手術を受けた人:27%
  • 2年以内に手術を受けた人:34%
  • 5年以内に手術を受けた人:39%

 またこちらの臨床研究から得られたその他の結果として、すぐに手術を受けた人の方が術後合併症が多かったと報告されています。薬で散らすか?手術を受けるか?どちらを選ぶかを判断するための材料にもなるお話になっていますので、気になる方はぜひ動画本編をご覧ください。

手術はどんな風に行われるの?

 日本では現在、腹腔鏡手術で虫垂を切除することが多く、その割合は全体の7〜8割を占めています。腹腔鏡手術はお腹に挿入したカメラで体の中を映し出し、その映像をモニターで確認しながら手術を行う方法です。

 手術というとお腹を大きく切って何日も入院をしなければならないのでは…というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、腹腔鏡の場合はそこまで侵襲の大きい手術ではありません。傷はおへその周辺に小さいものが2か所ほど、術後の在院日数は6日程度で済みます。また術後の合併症も入院が長引くような重症なものはほとんどないため、比較的安全性の高い手術といえます。

急性虫垂炎のまとめ

  • 単純性虫垂炎の場合はすぐに手術をしても、とりあえず抗菌薬で散らすでもどちらでも良い⇨自身の状況に応じて選べば良い。
  • 薬で散らした場合、約4割の人は5年以内に結局手術を受けている。
  • 手術は腹腔鏡で行うことが多く、かなり安全に行える。入院は1週間前後。
  • 膿が溜まってしまったり炎症が激しい複雑性虫垂炎の場合はこの限りではない(次回解説)。

 今回の記事では、パンダ校長の病気の学校より、【急性虫垂炎と言われたら!手術しなくても良い?】について解説しました。まとめとしては以下のようになります。

 今回解説したような軽い虫垂炎の場合では、薬か手術かを自分で選べるが故にどちらを選択すれば良いのか判断がつかない人も多いと思います。動画では図解を用いてさらにわかりやすく解説していますので、治療法について詳しく知りたい方はぜひ動画をご覧ください。

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