鼠径ヘルニア 脱腸で手術と言われたら

今回は、パンダ先生の病気の学校から『鼠径ヘルニア脱腸で手術と言われたら』をご紹介いたします。

詳しくは、下の動画をごらんください。

鼠径ヘルニアってなに?

鼠径(そけい)ヘルニアとは、腸などのお腹の中の臓器が鼠径部(左右の太ももの付け根部分)に飛び出してしまい、”ポッコリ”とふくらんでくる病気です。脱腸(=ヘルニア)ともいわれます。

このポッコリは、脱腸だったの!?ほっておいても大丈夫??

鼠径ヘルニア(=脱腸)は、ほっておいても治ることはなく、基本的には手術が必要です。腸が飛び出したところが出たり入ったりしているうちはまだ良いのですが、飛び出た腸が、お腹の中に戻れなくなって、キケンな状態になることもあります。

鼠径ヘルニアは、お腹に圧力がかかることで発症しやすくなります。立ち仕事や肉体労働に従事している方は、腹圧がかかることが多いため、鼠径ヘルニアを発症する可能性が高いです。

鼠径ヘルニアの種類

鼠径ヘルニアは、鼠径靭帯(そけいじんたい)を中心として、発生する位置により以下の3つに分類されます(下の図を参照)。

内鼠径ヘルニア・・・鼠径靭帯より上側

外鼠径ヘルニア・・・下腹部壁動脈より外側の部分

大腿ヘルニア・・・足の付け根から太もも部分

鼠径靭帯(そけいじんたい)・・・恥骨結節と上前腸骨棘(じょうぜんちょうこつきょく)を結ぶ帯のこと

鼠径ヘルニアは男性の病気というイメージを持っている人もいますが、女性でもしばしば発症します。”外鼠径ヘルニア”は、男性や小児の発症が多く、”内鼠径・大腿ヘルニア”は、女性に多いと言われています。女性の場合は妊娠を契機に症状が出ることもあります。

なぜ、鼠径ヘルニアになるの?

鼠径ヘルニアの発症は、成人と小児の場合では原因が異なります。

成人の場合・・・加齢によってお腹の内臓を支えている筋肉や組織が弱くなることが主な原因です。

鼠径部の筋肉の強度が保たれているうちは、小腸が外に飛び出してくることはありません。しかし、加齢に伴って骨の間の筋肉が弱くなったり、内臓脂肪が増えてきて腹圧が高くなってくると、臓器の重さを支えることが出来なくなって、スキマから小腸が垂れ下がってきてしまうのです。

小児の場合・・・先天性のものでほとんどが外鼠径ヘルニアです。

胎児期には睾丸は、実は腹腔内に存在します。生まれるころになると徐々に鼠径管を通って、下に下がっていき、最終的に陰嚢の中に収まります。その通り道は、通常は出生前に完全に閉鎖しますが、閉鎖せずに少しスキマが残ってしまうことがあり、その部分に小腸が飛び出してしまうことがあるのです。

鼠径ヘルニアには、どんな症状がある?

鼠径ヘルニアの主な症状は、鼠径部にしこりのようなふくらみができて、違和感や不快感を感じたり、ときには痛みを伴うこともあります。

横になったり、手でふくらみを押し戻したりすると、ふくらみの中身がひっこむのが特徴です。ふくらみの大きさは人それぞれですが、ピンポン玉くらいのだったものが、時間の経過とともに大きくなり、ソフトボールくらいの大きさになることもあります。

ふくらみが、出たり引っ込んだりしているうちはまだ良いのですが、戻らなくなるとかなり危険な状態で、これを「陥頓」といいます。

腸がもどらない”嵌頓(かんとん)”って?

”嵌頓(かんとん)”とは、ヘルニアの患者さんの腸が元の位置にもどらなくなってしまった状態です。嵌頓してしまうと、腸が締め付けられ、腸の壊死や腸閉塞に至る可能性があり、命にかかわる危険な状態です。この場合、緊急手術が必要になります。

飛び出た腸がもどらなくなった場合や強い痛みが生じた場合は

速やかに病院を受診しましょう!!

鼠径ヘルニアの治療方法を見てみましょう!

成人の鼠径ヘルニアの治療は基本的に手術です。腸が出てくる穴を縫い閉じるだけでは、弱くなった筋肉が強くなるわけではないので、しばらくするとまた「再発」してしまいます。そこで、”メッシュ”という人工の補強膜を用いて弱くなった筋肉を補給する方法が一般的です。

鼠径部の皮膚を切ってメッシュを埋め込む”鼠径部切開法”と、最近ではおへそのあたりからカメラを入れて、内側からメッシュを入れる”腹腔鏡法”の2つの方法が代表的です。

鼠径部切開法

鼠径部切開法は、鼠径部の皮膚を5cmほど切開して手術を行う方法です。飛び出た腸を元に戻し、伸びた腹膜(ヘルニア嚢)を切除します。そこへ補強材として”メッシュ”を挿入します。小児や若い患者さんの場合は、周囲の組織がしっかりとしているため、メッシュを入れずに縫い合わせるだけでも治ることが多いです。

腹腔鏡法

腹腔鏡での手術方法は、腹部の3か所に小さな穴をあけて、腹腔鏡(カメラ)を挿入して手術を行う方法です。お腹に炭酸ガスを注入して膨らませ、モニターの画像を見ながら、鉗子(かんし)という器具を使って操作します。

腹腔鏡の手術は、2つの種類がある

腹腔鏡の手術で代表的なものは、以下の2つが挙げられます。

  • TAPP法・・・お腹の中に入り、鼠径ヘルニアの穴を修復する方法
  • TEP法・・・お腹に入らずに、外側から修復する方法

病院や医師によって行っている手術が違いますが、術後合併症の発生率、再発のリスク、手術時間などに大きな差はありません。

最近は、腹腔鏡で手術する病院が多い!

最近では、腹腔鏡で手術する病院が増えています。腹腔鏡で手術を行うと、外から見るだけではわからない小さなヘルニアや、見にくい場所にできたヘルニアを発見できるというメリットがあります。たとえば、右の鼠径ヘルニアで手術をしてみたら、左もヘルニアになっていて、同時に治療できたりすることもあります。

再発はあるの?

再発の可能性は、あります!

鼠径ヘルニアの根本的な理由は、臓器の重みに耐えられないことが原因なので再発したり、反対側や別の場所から出てきてしまうことがあります

手術後のトラブル

鼠径ヘルニアの手術で挿入される、メッシュは人工物のため、何と言っても感染が問題になります。感染すると、なかなか傷がふさがらず、メッシュを取り出さざる得ないこともあります。以下に当てはまる方は、感染リスクが高いため注意が必要です。

  1. 感染に弱い人(免疫不全などの持病がある)
  2. 糖尿病に罹患している人
  3. ステロイド剤を服用している人
  4. 免疫抑制剤を服用している人
  5. 抗がん剤治療を行っている人
  6. 腹水がたまっている人

そのほか、鼠径ヘルニアの術後、「9.1%」の患者さんに慢性疼痛との報告があります。術後3か月以上続く痛み、引きつれなどが主な症状です。大抵なものは軽度なもので徐々に改善されますが、場合によっては、再手術を行うこともあります。

手術後は、とにかく感染に注意しましょう!

まとめ

今回は、パンダ先生の病気の学校から『鼠径ヘルニア 脱腸で手術と言われたら』をご紹介いたしました。

鼠径ヘルニアは、基本的には手術をしないと治りません。腸が出たり引っ込んだりしているうちはいいのですが、出たままもとに戻らなくなる、嵌頓(かんとん)を起こすと命にかかわります。強い痛みを生じた場合は、すぐにお近くの「外科」のクリニック・病院を受診しましょう。ちょっとしたからだの変化を見逃さないことが、自分の健康を守ることに繋がります!

パンダ先生の病気の学校の動画では、さらにわかりやすく解説していますので、

ぜひごらんください。

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